2016年1月18日月曜日

高校生物 第5講 生体膜

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予習

生体膜は,薄く,柔軟で,比較的安定なシート状の構造をしており,すべての細胞および細砲小器官を取り囲んでいます。


膜に与えられた多くの重要な機能のなかで最も基本となるのは,選択的な物理的障壁として機能することです。
膜の選択的透過性は分子やイオンが無差別に細胞や細胞小器官から周囲に漏れ出ていくのを阻止し、栄養素を吸収し,老廃物を排出することを可能にています。
さらに、膜は情報伝達(ゴルジ体のつくる小胞、赤血球の糖鎖)やエネルギー生産(ミトコンドリアや葉緑体の電子伝達系)においても重要な機能を果たしています。
ほとんどの生体膜は,リン脂質と他の脂質分子からなる脂質二重層という同じ基本構造をとっており,そのなかに様々ななタンパク質分子が埋め込まれています。糖鎖が結合している場合もあります。
このような「タンパク質がリン脂質の中にモザイク状に埋め込まれており、膜上を自由に動き回る」という生体膜の構造のモデルを流動モザイクモデルといいます。
講習
□ テーマ1 : 生体膜はリン脂質の二重の層からなる!

(1)リン脂質と生体膜
生体膜はイラストで覚える!脂質二重層を描いてみよ!

生体膜とは、細胞膜、ミトコンドリア膜、ゴルジ体膜などの総称。

これは驚くべき生物の共通性である!端的に言えば、生物とは、増殖するリン脂質でできた袋である!


アクティブラーニング課題:細胞膜はクロロホルムのような薬剤で破壊されるが、なぜか。










(リン脂質は脂溶性であるので、クロロホルムなどの有機溶媒に溶けだしてしまう。)









補足
リン脂質とは、グリセリンに脂肪酸が2分子(疎水性)とリン酸化合物(親水性)が結合した複合脂質のこと!

グリセリンに脂肪酸が3分子結合したものは脂肪(こちらは単純脂質という)という。

脂肪は、動物では皮下脂肪、植物ではアブラナ、ゴマ、トウゴマなどの種子に多く貯蔵される。



脂質とタンパク質に加えて、多くの膜は糖質を相当料含んでいる。糖質は膜の外側に位置しており、他の細胞や分子に対する認識部位として機能する。




脂肪の分解に関して問われる!胆汁は消化酵素を含まないことに注意!

リパーゼ・・・脂肪の分解を触媒する酵素。

胆汁・・・アルカリ性で胃液を中和するほか、脂肪を乳化してリパーゼの働きを助ける(胆汁自身は脂肪を分解しないことに注意)。胆汁に消化酵素は含まれない。

ステロイドについてみておこう!

その他の脂質には、ステロイドという化学構造(4つの環が融合した炭素骨格)を含むコレステロールがある。

性ホルモンや副腎皮質ホルモン(コルチコイド)はステロイドを含むので、コレステロールはその材料になる。
また、コレステロールは膜の流動性を保つのにも役立っている。

ステロイドホルモンはペプチドホルモンと違い細胞膜を通過できる。脂は脂とよくなじむ。






アクティブラーニング課題:赤血球は生体膜の研究によく利用される。なぜか。











(①ほかの細胞小器官が混入しない②細胞が単離している③入手が簡単)


アクティブラーニング課題:生体膜の基本的な構造について説明せよ。



(生体膜の主要構成成分は脂質であり、脂質の親水部分を外側に、また疎水部分を内側に向き合わせた二層構造(脂質二重層)をとっている。
生体膜を構成する脂質はリン脂質、コレステロールなどがある。
コレステロールは生体膜に流動性を持たせる役割を担っている。
この脂質二重層は低分子の気体や脂溶性分子を通過させるが、イオンや極性分子、タンパク質、糖、核酸は通さない。水も通しにくい(したがって水の細胞膜を挟んだ輸送には水チャネルである『アクアポリン』というタンパク質が必要)。
脂質二重層には複数のタンパク質がさまざまな細胞や細胞小器官の生体膜に特徴的に存在している。このことが、それぞれの膜の機能的な特徴を示す理由となっている。
ここまで詳しくかけなくてもよい。脂質による二重層には触れたい。)





(3)流動モザイクモデル←めっちゃよく問われる!


流動モザイクモデルという名称と、提唱者のシンガーとニコルソンはよく出る!
リン脂質の二重層にタンパク質が埋め込まれ、タンパク質は流動性があるという細胞膜のモデルを流動モザイクモデルという。

シンガーとニコルソンによって提唱された。


(2)選択的透過性←めっちゃよく問われる!

選択的透過性は書けるようにしておこう!!
細胞膜のもつ、溶質によって透過性が異なる性質を選択的透過性という!

水は脂質膜を通過しにくいが、分子が小さいため、ある程度は通過する。

水に対する透過性を上げるにはアクアポリン(水分子を通すチャネル)が必要。


アルコールやエーテルなどの脂質に溶けやすい物質は生体膜(脂質膜)を通過しやすい。


タンパク質やグルコースのような分子の大きな物質は細胞膜を通りにくい。


グルコースなどがいくら生体膜を通りにくいといったって、そのままにしておくわけにはいけない!当然細胞に必要である!そのために輸送タンパク質を進化させてきた!我







アクティブラーニング課題:グルコースは、解糖系のはじめのステップでATPを付加され、グルコース6リン酸となる。
グルコース6リン酸は様々な反応の基質になるが、
それ以外にもこのリン酸基の付加には重要な意味がある。
どういう意味があるのか。
グルコースの細胞膜に対する透過性は低いが、わずかなもれもあることを踏まえて説明せよ。







(リン酸基の負電荷のため、糖リン酸は細胞膜を通過できず、グルコースを細胞膜にとどめることに貢献する



















アクティブラーニング課題:Mg+などの無機イオンは、電荷をもっているので、ある分子と相互作用し、生体膜を透過できない(透過にはチャネルが必要。例えばKチャネルなど。)。
ある分子とは何か。






(水。極性を持つ物質は水に引っ張られ生体膜を透過できない。)


補足
ビタミンAは脂溶性なので透過できる(ビタミンBは水溶性なので透過できない)。


酸素や二酸化炭素などの非極性小分子は拡散により迅速に膜を透過する!


尿素はゆっくり、拡散により透過する(しだいに透過してくる)。


細胞膜にはホルモンの受容体となるタンパク質も存在する。


ステロイドホルモンは脂溶性であり細胞膜を通過できる(ステロイド⇒ステロイド核をもつ化合物のこと。他にもコレステロールや性ホルモン、コルチコイドなどがステロイドである。性ホルモンやコルチコイドをステロイドホルモンという。チロキシンはステロイドホルモンではないが化学構造の特徴により細胞膜を透過できる。)。


ステロイドホルモンは細胞内に入って受容体と結合する(受容体と複合体を形成し、転写因子になることが多い)。


ペプチドホルモンは細胞膜を透過できない。
したがってペプチドホルモンは細胞膜上の受容体と結合することによって細胞内に情報を伝える。

アクティブラーニング課題:ペプチドホルモンは細胞膜を通過できない。にもかかわらず情報を細胞内に伝える。どのように細胞内に情報が伝わるのか。説明せよ。





(セカンドメッセンジャーがかかわる。細胞内で別の物質が働き、ホルモンが細胞膜の外の受容体に結合したことを細胞内に伝える


ホルモンや神経伝達物質などの細胞外情報物質が細胞膜に存在する受容体と結合することによって、細胞内で新たに生成される別種の細胞内情報物質。


□ テーマ2 : 生体膜を介した輸送の仕組みをマスターしよう!
チャネルは受動輸送!ポンプは能動輸送!まずはひたすらこれだけを覚えよう!

(1)ポンプ
ポンプ・・・ATPのエネルギーを使って物質輸送を行うしくみ。能動輸送!  
例:ナトリウムポンプナトリウム・カリウム-ATPアーゼというタンパク質がATPのエネルギーを使って細胞内にカリウムイオンを、細胞外にナトリウムイオンを輸送する→神経細胞における静止電位の形成に役立っている。)



(2)チャネル
チャネル・・・イオンや水の通路。一般的に開閉にはエネルギーは不要!
濃度勾配に従って物質を輸送する(濃度差が解消される方向に輸送する)ので受動輸送!
例:カリウムチャネル(カリウムイオンが通れる)、アクアポリン(水が通れる)

アクアポリンは腎臓での水の再吸収にも関与!アクアポリンの数が細胞膜上に多いほど水の透過性が高くなる!


バソプレシンは水の再吸収を促進する→実は、アクアポリンを細胞膜上に増やすシグナルがバソプレシンだったのだ!










アクティブラーニング課題:チャネルやポンプはなぜ必要か。




(電荷をもつイオンは細胞膜を通過できないので、その通路のため。また、神経細胞などでは、ポンプを用いてイオンの濃度勾配を形成して静止電位をつくっておく。そうすることで、興奮時、チャネルの開閉による活動電位の制御を迅速に行うことができる。)












アクアポリンは小胞に埋め込まれており、バソプレシンが分泌されると、小胞が細胞膜と融合し、集合管の細胞膜上に埋め込まれる。


(3) 共役運搬体・・・ナトリウムイオンの濃度勾配を利用してグルコースを濃度差に逆らって輸送する。ナトリウムイオンの濃度勾配に蓄えられた『エネルギーを用いて』グルコースを輸送するので、能動輸送である!
このような輸送を共役輸送という!



□ テーマ3 : 細胞間の接着のしくみを押さえよう!
出題頻度はたかくないが、ギャップ結合の利点は説明させられる!



(1)細胞接着にかかわるタンパク質としてカドヘリンがある。
カドヘリン同士が結合するためにはカルシウムイオンが必要。

植物では、細胞同士はペクチンという糖で接着している!細胞がなぜばらばらにならないかを考えなさい!



(2)細胞と細胞のつながり方には以下のようなものがある。

①密着結合
密着結合(タイト結合)は上皮細胞で見られる!細胞間を物質が通れないようにする!

②接着結合

③デスモソームによる結合
デスモソームはボタンのような構造をとっている。強固な結合である。

④ギャップ結合
ギャップ結合は、中空のパイプのようなタンパク質による結合。イオン、糖、アミノ酸などが通る。

アクティブラーニング課題:ギャップ結合の利点を説明せよ。







(細胞外部を経由しないため、つながった細胞同士で化学物質や電位変化がエネルギーを必要とせずに早く簡単に伝わり、多くの細胞が同調してはたらくことができる。)

⑤原形質連絡(植物)
原形質連絡というつながり方で植物細胞同士がつながっている。
また、原形質連絡でつながった細胞壁の間には連絡路がある(動物のギャップ結合に似ている!)。
つまり、高等植物は細胞同士が連結した多核体ととらえることができる。